
【法人向け】FIP制度とは?PPA契約・再エネ調達への影響をわかりやすく解説
- FIP制度とは?
- FIP制度とFIT制度の違い
- そもそもFIT制度とは?
- FIP制度とFIT制度の比較表
- FIP制度導入前に需要家が確認すべき3つのポイント
- 価格:単価の決まり方(固定単価/市場連動)
- 環境価値:非化石証書の扱い
- 契約条件:供給条件・期間・リスク分担
- FIP制度の需要家のメリット
- 再エネ調達の選択肢が広がる
- 非化石証書の調達機会が増える
- 将来的に国民負担の抑制が期待される
- FIP制度の需要家のデメリット
- 価格変動リスクが増える
- 契約・運用が複雑化し、追加コストが発生する可能性がある
- FIP制度が導入された背景
- プレミアム(補助額)の算出方法
- 基準価格
- 参照価格
- FIP制度に関するよくある質問
- FIP制度を理解し再エネ運用を進めよう
FIP制度とは?
FIP制度とは、発電事業者が市場価格で売電した際、その価格に一定のプレミアム(補助額)を上乗せする制度です。正式名称は「フィードインプレミアム(Feed-in Premium)」といいます。 再エネ電力を市場に取り込み、需給や価格を意識した運用を促すことで、再エネの主力電源化を進める制度です。
◎需要家にとっての重要ポイント
FIT制度と異なり売電収入が市場価格の影響を受けるため、FIP電源を活用したPPAや再エネ調達では、「価格の決まり方」「環境価値(非化石証書)の扱い」「供給安定性」の3点を契約前に確認しておくことが重要です。FITとの違いは次章で解説します。
FIP制度とFIT制度の違い
そもそもFIT制度とは?
FIT制度とは、再エネ電力を国が定めた固定価格で、一定期間買い取ることを保証する「固定価格買取制度」のことです。電力会社が原則として全量を買い取る仕組みです。売電価格が市場動向に左右されず一定に保たれるため、発電事業者にとって事業の見通しが立てやすく、収益が安定しやすいという大きな特徴があります。
FIP制度とFIT制度の比較表
比較項目 | FIT制度 | FIP制度 |
売電価格 | 固定価格(市場変動の影響なし) | 市場価格連動(変動リスクあり) |
収益の仕組み | 固定買取価格のみ | 市場価格による収入 + プレミアム(補助額) |
インバランス負担 | 一定の特例措置により、発電事業者の負担が軽減される | 発電事業者が負担(バランシングコスト) |
非化石価値の取引 | 制度側に帰属し、非化石証書として市場で取引される | 発電事業者が保有・取引 (PPAで付帯可能、別途調達も可) |
FIP制度とFIT制度には、主に買取価格、インバランスの取り扱い、非化石価値の取引において明確な違いがあります。
FIT制度は価格が固定されていますが、FIP制度は市場価格に応じた収入に「プレミアム」が支給され、投資インセンティブが確保されています。一方で、FIP制度では発電計画と実績の差分(インバランス)に対するコストを事業者が負担する義務が生じます。また、FIP制度では非化石価値を証書として市場で直接取引できる点も、FIT制度との大きな違いです。

出典:資源エネルギー|再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート
◎非化石価値とは?
非化石価値とは、石炭や石油などの化石燃料を使わずに発電された電力が持つ「環境に優しい」という付加価値のことです。 この価値は市場で取引可能な「非化石証書」として扱われます。企業はこれを購入することで自社の環境貢献を客観的に証明でき、イメージ向上や投資家からの高評価、持続可能な経営戦略の強化につなげることができます。
◎バランシングコストとは?
バランシングコストとは、発電計画値と実際の供給(実績)を一致させるための調整費用です。再エネは天候に左右されるため、計画通りに供給できない場合、その差分を補填・調整するためのコストが発生します。FIP制度では、このコストを発電事業者が負担するルールとなっています。
FIP制度導入前に需要家が確認すべき3つのポイント
・価格:単価の決まり方(固定単価/市場連動)
・環境価値:非化石証書の扱い
・契約条件:供給条件・期間・リスク分担
FIP制度を踏まえたPPAや再エネメニューを検討する際は、制度そのものよりも「契約で何が決まっているか」を押さえることが重要です。ここでは、法人需要家が導入前に確認したいポイントを 価格・環境価値・契約条件 の3つに整理して解説します。
価格:単価の決まり方(固定単価/市場連動)
FIP制度は発電事業者の売電収入が市場価格に連動する仕組みですが、 需要家とのPPA契約では「固定単価」「市場連動」どちらの設計も可能です。 重要なのは、契約の中で価格がどう決まるかを明確にすることです。 見積の単価だけで判断せず、価格算定式や調整条項 (どんな条件で、どの程度変動するか)を必ず確認しましょう。
確認すべき具体項目 |
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☑価格算定式(何に連動するか:JEPX平均価格、時間帯別価格など) |
☑価格上限・下限の有無(キャップ&フロア条項) |
☑調整頻度(月次・四半期・年次) |
☑過去の価格シミュレーション資料の有無 |
環境価値:非化石証書の扱い
再エネ調達では、電気そのものに加えて 環境価値(非化石価値)をどう確保するかが重要です。PPAや再エネメニューによっては、電力に環境価値がセットで提供される場合もあれば、証書を別建てで調達して組み合わせる設計になる場合もあります。さらに、証書の移転方法(名義・証明の形)によって、社内外への説明のしやすさが変わるため、提供側に確認しましょう。
確認すべき具体項目 |
|---|
☑ 非化石証書が契約に含まれるか、別途調達か |
☑ 証書の種類(非化石証書/J-クレジットなど) |
☑ トラッキング情報の有無(発電所特定の可否) |
☑ 証書の名義変更・移転方法 |
契約条件:供給条件・期間・リスク分担
契約の前提条件とリスク分担を確認します。再エネは発電量の変動があるため、供給条件や不足分の扱い、契約期間、解約条件などで実質的なリスクが大きく変わります。調達の狙い(コスト重視/脱炭素重視/BCP重視)に照らして、運用まで含めて無理のない形かを見極めましょう。
特に「発電が不足した場合の補給方法(誰が、どの価格で手当てするか)」と「途中解約・更新条件」は、実質コストに直結するため優先して確認しましょう。
リスク対策の例 |
|---|
☑固定価格型PPAを選択:FIP電源でも固定単価契約は可能 |
☑上限価格(キャップ)付き契約:価格高騰時のリスクを限定 |
☑複数電源の組み合わせ:FIT/FIP/市場調達を分散 |
☑予算バッファの確保:変動幅を見込んだ予算設計 |
FIP制度の需要家のメリット

・再エネ調達の選択肢が広がる
・非化石証書の調達機会が増える
・将来的に国民負担の抑制が期待される
FIP制度の導入により、再エネ電力が市場とより一体で扱われるようになり、需要家にとってもPPAや再エネメニューの選択肢・設計の幅が広がります。価格の決まり方や環境価値の扱いを理解しておくと、調達戦略を組み立てやすくなります。
再エネ調達の選択肢が広がる
FIP制度の導入により、市場連動型の電力供給モデルが広がり、企業は自社の電力使用パターンや事業特性に合わせた再エネ調達プランを選択できるようになります。たとえば、日中の電力使用が多い製造業では太陽光FIP電源とのPPA契約、24時間稼働するデータセンターでは蓄電池併設型FIP電源など、FIT電源では難しかった柔軟な調達設計が検討しやすくなります。
非化石証書の調達機会が増える
FIP制度では発電事業者が環境価値(非化石価値)を証書として取引・移転しやすくなり、需要家は必要量に応じて調達設計を組みやすくなります。これにより、RE100やSBT、カーボンニュートラル達成を目指す企業にとって、環境価値の調達機会が拡大します。調達タイミングや数量を自社の脱炭素目標に合わせて柔軟に設定できるようになり、戦略的な環境価値調達が可能になります。また、市場の活性化により価格の透明性が高まりやすいです。
将来的に国民負担の抑制が期待される
FIP制度は市場価格に連動する仕組みのため、発電事業者が需要の高い時間帯に効率的に電力を供給するインセンティブが働きます。これにより電力の需給バランスが最適化され、再エネの無駄な発電抑制が減少。結果として、電気料金に上乗せされる「再エネ賦課金」の増加抑制につながることが期待できます。中長期的には、企業の電力コスト負担軽減にもつながる可能性があります。
再エネの地域活用に取り組みも進んでいる!
FIP制度は、エネルギーの地産地消を推進する原動力にもなっています。たとえば北海道石狩市では、FIPを含む制度を背景に、地域で発電した再エネ電力を地元のデータセンター等へ供給する取り組みが進んでいます。地域一体となった再エネ活用は、脱炭素化と地域経済の活性化を同時に実現するモデルとして注目されています。
出典:環境省「石狩市における再エネデータセンターを核とした地域エネルギーシステム構築事業 」
FIP制度の需要家のデメリット
・価格変動リスクが増える
・契約・運用が複雑化し、追加コストが発生する可能性がある
FIP制度は再エネ調達の選択肢を広げる一方で、市場連動型ならではの注意点もあります。PPAや再エネメニューを検討する際は、価格変動リスクや契約条件を事前に整理しておくことが重要です。
価格変動リスクが増える
FIPは市場価格の影響を受けやすいため、PPAや再エネメニューでも契約形態によっては調達単価が変動し、電力コストの見通しが立てにくくなる場合があります。市場価格が高騰する局面ではコストが想定を上回る可能性もあるため、固定価格か連動価格か、価格調整条項の有無などを確認し、必要に応じてヘッジ(固定化・上限設定など)を検討しましょう。
契約・運用が複雑化し、追加コストが発生する可能性がある
市場連動を前提とした調達では、価格算定のルール、環境価値(非化石価値)の移転方法、供給条件など確認事項が増えます。また、再エネ比率を高めるほど、需要のピーク対策や非常時のバックアップ、蓄電池・DRの活用といった運用面の追加投資が必要になるケースもあります。契約内容と自社運用(BCP含む)をセットで検討することが大切です。
FIP制度が導入された背景
日本政府は、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目標に掲げ、再生可能エネルギーの導入拡大を急いでいます。
これまでの主軸であったFIT制度は、再エネ普及に大きく貢献した一方、固定価格での買い取りゆえに市場の需給状況を反映しにくく、電力の有効活用に課題がありました。また、買い取り費用の一部が「再エネ賦課金」として国民の電気料金に上乗せされており、その負担増も議論の的となっています。
そこで導入されたのがFIP制度です。再エネ電力を市場価格に連動させつつ、一定のプレミアムを付与することで、事業者の投資意欲を維持。市場を意識した効率的な電力供給を促し、国民負担の抑制にもつなげつつ、再エネを主力電源化することを目指しています。
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FIP制度の仕組み

出典:資源エネルギー|再エネを日本の主力エネルギーに!「FIP制度」が2022年4月スタート
プレミアム(補助額)の算出方法
FIP制度で交付される補助額(プレミアム)は、以下の計算式によって算出されます。需要家の立場でも、PPAや再エネメニューの価格設計を理解するうえで、FIPの収入構造を押さえておくと整理しやすくなります。あわせて、環境価値(非化石価値)の扱いを確認する際にも役立ちます。
補助額(プレミアム)の計算式 |
|---|
プレミアム単価=基準価格(FIP価格)−参照価格 |
プレミアム(補助額)=プレミアム単価×再エネ電気供給量を乗じた額 |
発電事業者は、このプレミアム単価に実際の供給量を乗じた額を受け取ることができます。プレミアムは市場価格の変動を反映させるため、1か月ごとに決定されるのが特徴です。これにより、市場連動性を保ちつつ事業者の収益性が補完されます。
基準価格
基準価格は、プレミアムを算定する際の重要なベースとなる価格です。FIP制度の開始以降、当面はFIT価格と同水準に設定されます。一度決定された基準価格は、交付期間(電源種別により異なる)の間、原則として固定されます。
参照価格
参照価格は、市場取引によって得られることが期待される収入の目安です。以下の式を用いて機械的に算出されます。
参照価格(計算式) |
|---|
参照価格=卸電力市場の価格に連動して算出された価格+非化石価値取引市場の価格に連動して算出された価格-バランシングコスト |
市場価格や非化石価値の動向に応じて変動するため、売電収入の予測にはこの参照価格の把握が不可欠です。
FIP制度に関するよくある質問
ここでは、FIP制度に関するよくある質問を取り上げています。理解したつもりでも、意外な盲点があるかもしれません。こちらでぜひ、確認をしてみてください。
PPA契約を検討中です。FIPとFITどちらを選ぶべき?
A. 判断の軸は「価格の決まり方」と「環境価値(非化石価値)の受け取り方」です。調達単価を固定したい場合は、固定単価型のPPAや再エネメニューが向きます。一方、市場連動も含めて柔軟に設計したい場合は、FIP電源を含む再エネ電源との契約も選択肢になります。環境価値は証書で補完できるため、自社の脱炭素目標・予算・リスク許容度に合わせて契約条件(価格調整条項、証書の付け方など)を比較して決めましょう。
FIP制度のプレミアムは誰が支払う?
A.プレミアムの原資は、FIT制度と同様に電気の利用者が支払う「再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)」によって賄われています。国が電力会社を通じて集めた賦課金を財源とし、費用負担調整機関を通じて発電事業者に交付される仕組みとなっています。
FIP制度の認定要件は?
A. 対象となる電源や要件は、電源種別・年度・設備規模によって整理されており、一定規模以上はFIPのみとなる区分もあります。契約検討の場面では、相手方(発電事業者/小売/アグリゲーター)に「当該電源がFITかFIPか」「環境価値の扱い」「価格の決まり方」を確認し、最新の公的資料の区分もあわせて確認するのが確実です。
FIP制度を理解し再エネ運用を進めよう
FIP制度は、再エネ電力を市場とより一体で扱うことで、PPAや再エネメニューの設計の幅を広げることが期待される仕組みです。一方で、市場連動による価格変動や契約条件の複雑化といった注意点もあります。調達目的(コストの見通し、環境価値の確保、BCPなど)を整理したうえで、自社に合う契約形態やリスク分担を選ぶことが、再エネ調達を成功させるポイントです。

エネブリッジでは、よりリスクの低い1年単位で契約更新が可能で、PPA事業者が所有する太陽光発電システムを利用した短期契約ができます。「FIP制度の価格変動リスクを抑えたい」「まずは小規模で再エネ調達を試したい」といった企業に、脱炭素経営を始めるきっかけになると注目されています。より多くの企業が脱炭素経営に順応しやすい体制をサポートしているので、ぜひエネブリッジまでお気軽にお問い合わせください。




